ムーミンの世界観
先週のことになりますが、京都に「北欧モダン―デザイン&クラフト―」という展覧会を見に行ってきました。
ずっと続いてきた北欧ブーム、もうブームとも言わないのかもしれませんが、なぜわたしたちって北欧デザインに惹かれるのでしょう。
北欧といえばイメージするのが、まずは雪。針葉樹の森や、凍るような湖、白夜、それにバイキング・・などなどです。やっぱり自然が厳しいのです。その中で、自然と上手に共存する事や、家庭や地域のコミュニティを社会の中心として、助け合いながらも干渉しすぎず、という他者との距離感、というのが培われていったのです。
北欧各国(スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェー)は、同じように思えてもやはり、立地条件や歴史的な背景などは少しずつちがっています。それでも、上に書いたような生活のテーマは、共有しているのです。
そのテーマをもっとも分かりやすく説明しているのが「ムーミン」の世界。
まさに家族や地域を中心にしたコミュニティ、他民族(ミイとかニョロニョロとか?)とのゆるやかな共同生活、自由と冒険の精神、人生哲学を思わせるセリフ・・・。
ムーミンの原画も展示されていたのですが、じっくりと見入ってしまいました。小さな絵だったので、「ここから入らないで下さい」の白線を越えそうになるくらい、身を乗り出して見ました。ムーミンの原作は、作者のトーベ・ヤンソンさんが絵も描き、本の装丁もしているそうです。まさにヤンソンワールドです。
今の日本はすっかり便利になって、お金さえあればなんでも手に入るような、それに機能がいっぱいで目新しければOKみたいな風潮です。でもこれからはお年よりも増えるし、そのお年寄りの世話をする人も増えます。そうした時にもっと「生活」に目を向けて、他者との助け合いや優しさを惜しまず、それでいて自分をしっかり持ってお互いに干渉し過ぎない・・・。そんな「助け合いと自立」の精神が、すごく大事になってくると思います。
日本がこのままでいい、と思ってる人は少ないと思います。みんな、気持ちのどこかでは、この社会を何とかしなきゃ、それに必要なのはお金じゃなくて心だ、って気付いてる。
だから無意識のうちに、手仕事の完成度が高くて、自然との共存を大事にしてきた、という共通点を持つ北欧の文化に惹かれるんじゃないのかな?
高校の頃、ムーミンワールドをこよなく愛する先生がいらっしゃいました。直接習った事はないのですが、それに何の教科を教えておられたのかも覚えてないのですが、とにかく年配の男の先生で、「あの先生はムーミン好き」という事で有名でした。その先生はわたしの在学中に定年退職となり、終業式かなにかでごあいさつをされたのですが、予想通り?ムーミンの話に終始されたんです。なんとまあ風変わりな、ということで生徒たちもろくに真面目に聞いてなかったような気がしますが、
もしかしたら・・・、と思うのです。
もう20年も前の事ですが、その先生は、当時から北欧の生活スタイル、生活テーマ、価値観、が、こんな風に大事なんだよ、と訴えておられたのかも。きっとそうだったんだろうなと思います。ムーミンなんて子ども向けのアニメだと思ってた高校生には、響くものがなかったけれど、今にして思えばあの先生はすごかったんだな、なんてことを考えながら、帰りの京阪電車に揺られておりました。
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