カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2007年5月 6日 (日)

宮本輝「流転の海」

GWも最終日。今日はお天気ももう一つなので、我が家はみんな家でゆっくりしています。
明日からの日常に向けて肩慣らし、というところかな?

今年のGWも、まとまったお出かけはなかったのですが、前半は家の模様替え(スタディコーナー)をしたり、後半はわたしと夫、それぞれのファミリーと過ごしたりと、それなりに有意義でした。

わたし個人的には、そんな遊びや家事の合間を縫って(というかほとんど放棄して)読書に没頭していました。
久しぶりに読み返した宮本輝の「流転の海」が面白くて、勢いに乗って続編2冊も買ってきて、一気に読みふけってしまったのでした。

松坂熊吾という情愛の深い、その裏返しに自分勝手で気が短い、魅力的な事業家の男性を軸に、たくさんの登場人物とのかかわりが縦横無尽に描かれていて、興味が尽きる事がないのです。
戦後、ヤミ市が広がる大阪市内から物語がはじまります。戦争で失った会社を再興するために、50歳ではじめて授かった我が子を立派に育て上げるために、独特の人を見る目と時代を読む勘で、熊吾は様々な事業に手を染め、再び財を成します。
その一方で関わりあった人たちの面倒を見ずにはおけない彼の元には、彼を頼って様々な人が相談に訪れたり、反対に助けられたり・・・。
人間はただただ善良なだけでも、醜悪なだけでもなくて、業の深さも美しさも、全てが一人の人格の中にある。それを全て合わせ飲む熊吾は、それで失敗する事もあれば幸福の涙を流す事もある。そんな熊吾が58歳になり、病弱だった一人息子が小学校3年生になったところで分厚い3冊の本が終わりました。

この続きって、出ているんでしょうか?3冊目の「血脈の火」から、もう10年以上たっているみたいなんですが・・・。

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2007年3月19日 (月)

【ドラゴン・リリーさんの家の調査】

【ドラゴン・リリーさんの家の調査】

今日は本の紹介を。

「ドラゴン・リリーさんの家の調査」
調査・絵・文:山本理顕

NHKBSの「週刊ブックレビュー」で、数週間前に紹介されていて知りました。
「ドラゴン・リリーさん」と「おさださん」の家のことが書かれています。

具体的なことは、最後までわかりません。
ただ、「ドラゴン・リリーさんとおさださんは、並んで歯をみがきます。」みたいな簡単な文章の横に、洗面室の平面図が書かれています。

図面は手描きで、寸法がミリ単位できっちり入っており、色鉛筆で着彩されています。

そんなページがいくつも続き、この家の部屋が順番に紹介されていきます。

さあ、ドラゴン・リリーさんは、おさださんは、何者なんでしょう?
「家族は最大5人です」って、どういう意味なんでしょう?

そして、家の紹介が終わると、この不思議な家だけを見下ろしていた視点が急にパノラマになり、町内の様子、もっと広い範囲の地域の様子が、鳥瞰図で描かれます。

一つ一つの家のあり方が町を作っているし、町全体ののあり方を見て、初めて一つの家の暮らしぶりが見えて来るんだよ、と教えてくれるような本です。

この本は「くうねるところにすむところ」という、こども向けの住関係本シリーズの中の一冊のようです。
でもいかにも子ども向けというのではなくて、淡々と客観的な描写の中で家族の姿を想像させてくれる、ちょっと突き放したようなスタンスに、大人のわたしも充分引き込まれます。

(ところで、建築家の描くイラストって、シンプルでかわいい事が多いと思うのです。そして、数字も。
わたし、高校時代の数学の先生が板書する、丸みがあって繊細な数字が、実はとても好きでした。数式の意味はほとんどちんぷんかんぷん・・でしたけど。そしてその先生自身もちょっとニガテだったけど、書かれる数字や図形は、なんだか消すのが惜しい「作品」みたいだったなぁ・・・。
この本のイラストも、寸法の数字も、そんな風にかわいいシンプルさがあって、そこがまた気に入ってるところです。)

もちろん、我が家の子どもたちにも見せましたが、2人とも気に入ったみたいです。自分の家と比較したり、町のパノラマに見入ったりしていました。
こんな本を通して、住まいや暮らし、町について、少しでも意識してくれたらウレシイなぁ・・・。

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2006年1月19日 (木)

おとなの小論文教室

今日は本の紹介です。

「大人の小論文教室。」 山田ズーニー

これは、人気サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の中のコラムを、本にしたものだそうです。私はこの本を書店でたまたま見かけて、ぱっと買ってしまったので、サイトのコラムは見たことがなかったのです。

最近、このブログもそうなんですが、他にも原稿を書くお仕事もあるし、昔から書くことは好きなんですが書き方や作法のようなものをきちんと勉強したことがないので、何か参考になればな~と、言う程度で読み始めましたが。

内容は、全く予想外でした(笑)

自分の思いを伝える。
自分の気持ちを、表現する。
自分の頭で考え、自分の言葉で表現する。

それは、

人とつながる、こと。

この、人とのつながりがうまく持てないとか、自分の存在を消そうとする、距離感がつかめない、っていう人が増えてるな~と、私でも思います。

自分の存在を消そうとするあまり、周りの人もいないことになってる。例えば電車で化粧する女性。

就職活動のセミナーに参加するのに、何か発表しないといけないなら参加しませんという学生さんもいるとか。自分の考えを発表できないで、どうやって就職活動するんだよう!

コミュニケーションの問題ですね。

私にとってう~むとうならされたのは、「自分の才能はどこにある?」という箇所でした。
才能は、実は自分の中にあるんじゃなくて、・・さてどこにあるのでしょう?

自分の理想、好きなこと、世界観を守っていくことは、ともすれば閉じてしまうことにつながる。でも、社会の中で活かされてこそ、それは価値のあることなんですよね・・・

なんだかうまく書けませんが、そういう本でした。

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